頭のなかで「どうして?」ってうずまく。わかるはずもないことを考えて堂々巡り。せめて祈る気持ちで自分が何かを書くとき、手本にさせていただこうと誓った。
ぼくは、今、畑の世話にむちゅうです。ぼくの畑からは、命がぴゅこんと毎日生まれます。くわとスコップで一生けん命作った畑は、ぼくの自まんです。
お休みの日、家の人に、「ぼく、自分の畑を作りたい。」と言いました。お母さんとおばあちゃんは、びっくりして、「本当にできるの。育てられるか。」と聞いてきました。ぼくは、もう心を決めていました。そして、おばあちゃんの畑のとなりをゆずってもらいました。学校よりも広い広い土地でした。
日曜日、おばあちゃんと朝市に行きました。なえを売っている所で、ぼくの足が動かなくなりました。ぼくの畑にうえたいなえがいっぱいありました。この日から、ぼくのおこづかいは、全部、なえにかわりました。
トマト、いちご、なすび、ささぎ、さつまいも、すいか、メロン。花は、ひまわり、ほうせん花、レモンバーム、ミント、カモミール、ラムズイヤー、バジル。木は、ポニーテール。全部、ぼくの畑で元気です。
学校でこの畑のことを発表したら、「拓海くんってガーデニング王子だね。」と言ってくれました。
そう、ぼくは、ガーデニング王子です。作物が実るのを楽しみに、ミミズいっぱいの畑の世話をするガーデニング王子です。
「ぼくの足が動かなくなりました」に心が震え、「ぼくのおこづかいは、全部、なえにかわりました」に微笑む。でももう君はいない。広い土地、朝市の光景、その時々の気持ちを言葉で伝える。言葉にできないことを言葉で伝えられるのはすばらしい。どんな気持ちで書いたのだろう? ひとつひとつの言葉に悩んだのだろうか。あるいは迷うことなく鉛筆が動いたの。一言一句にすべてがあふれている。
君は詩も書く
おかあさんは
どこでもふわふわ
ほっぺは ぷにょぷにょ
ふくらはぎは ぽよぽよ
ふとももは ぼよん
うでは もちもち
おなかは 小人さんが
トランポリンをしたら
とおくへとんでいくくらい
はずんでいる
おかあさんは
とってもやわらかい
ぼくがさわったら
あたたかい 気もちいい
ベッドになってくれる
歳を重ねて身体が大きくなったのと引き替えに何を失ったのだろう。「伝える」ことを忘れてしまったようだ。